こんにちは、精神科医のAです。 今回は「ストレスへの対処方法」についてお話しします。ストレスがたまる出来事に直面したとき、どう対応すればよいのか迷うことはありませんか?実は、対処法にはいくつかの種類がありますが、認知行動療法にもとづく方法は非常に実践的です。特に、問題解決志向の対処法(Problem-Focused Coping)と感情志向の対処法(Emotion-Focused Coping)は、ストレスに対応する上で重要なアプローチとして広く用いられています。
問題解決志向の対処法は、ストレスの原因そのものにアプローチする方法です。この方法は、問題を明確にし、計画を立てて行動することに重きを置きます。たとえば、宿題や仕事の締切に追われている場合、タスクをリスト化して優先順位をつけたり、他者に助けを求める行動がこれに当たります。
ストレスの原因を紙に書き出し、何が解決すべき課題なのかをはっきりさせます。
可能な解決策をすべて列挙し、その中から実行可能なものを選びます。
解決策を試し、効果を評価して調整します。
これらのステップを通じて、ストレスの根本原因を解消し、問題に対して積極的に取り組むことができます。
一方、感情志向の対処法は、不安や怒り、悲しみなど、ストレスによって引き起こされる感情に焦点を当てます。特に、解決が難しい問題や時間がかかる課題に対して効果的です。認知行動療法で広く用いられる具体的な方法として、リラクゼーション技法や認知再構成法が挙げられます。
体の筋肉を意識的に緊張させ、その後緩めることで、心身のリラックスを促します。この方法は、体の緊張を解消し、不安を和らげる効果があります。
(できれば、目が閉じてリラックスしてゆったりと椅子にすわります)
●手や肩の筋肉を5~10秒間緊張させ、その後ゆっくり力を抜きます。
●全身の筋肉を順番に行い、緊張と緩和の感覚を味わいます。
深い呼吸を通じて自律神経を整える方法です。不安や緊張を感じたときに即効性があります。
●鼻からゆっくり息を吸い込み、3~4秒かけて肺を満たします。
●息を一瞬止めてから、口をすぼめて6~8秒かけてゆっくり吐き出します。
(リラックス、や落ち着いて、等とと頭の中で唱えた方が効果的な場合もあります。)
ストレスを引き起こす考え方(認知の歪み)を見直し、現実的で柔軟な考えに置き換えます。たとえば、「ミスをしたら全てが終わりだ」という思考を、「ミスは成長のチャンスだ」と考え直す練習をします。
感情志向の対処法で気持ちを落ち着けた後、問題解決志向の行動を取り入れることで、ストレスへの対応力をさらに高めることができます。例えば、深呼吸で心を落ち着けた後にタスクを整理し、優先順位を決めるといった手順が効果的です。
認知行動療法の対処法は、ストレスの根本原因にアプローチする問題解決志向と、感情を落ち着ける感情志向の両方をバランスよく活用することが特徴です。どちらの方法も簡単に日常生活に取り入れることができるので、ぜひ実践してみてください。次回は、アメリカで注目されている「解決志向のスクールカウンセリング」についてお話しします。お楽しみに!
※認知行動療法は、認知(考え)と行動の変容を促し、こころの問題を解決する心理療法です。
千葉⼤学で2019年4⽉に⽴ち上げた「簡易(低強度)認知⾏動療法的アプローチによる相談⽀援を⾏うメンタルサポート医療⼈養成プログラム」では、対⼈援助職の⽅々を⽀援しています。
2023年度より千葉⼤学発ベンチャー「株式会社メンサポ」が上記の教育⽀援事業を引き継ぎました。
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