「解決志向カウンセリング」について~アメリカ留学中 精神科医 A先生の心の成長を支えるアプローチ~

こんにちは。精神科医のAです。今日は、アメリカの学校でよく使われている「解決志向カウンセリング(Solution-Focused Counseling, SFC)」についてお話ししたいと思います。この方法は、スクールカウンセラーが生徒の悩みを解決する手助けをするために広く活用されています。

解決志向カウンセリングとは?

解決志向カウンセリングとは、問題の原因を深く掘り下げるのではなく、解決策を見つけることに焦点を当てるカウンセリングです。一般的なカウンセリングでは、過去の経験や問題の背景を詳しく話すことが多いですが、SFCでは「何がうまくいっているか」 に注目し、その強みを活かして前向きな変化を生み出していきます。

カウンセリングの中では、クライアント(相談者)に「理想の未来」をイメージしてもらいます。つまり、「問題が解決した後の自分の姿」を考え、それを実現するためにできることを見つけていくのです。例えば、カウンセラーは次のような質問をします。

  • これまでに、この問題を乗り越えられたことはありますか?
  • もしこの問題がなくなったら、あなたの生活はどう変わりますか?
  • その理想に近づくために、今できる小さな一歩は何ですか?

このように、クライアントが自分の中にある「解決策」を発見できるようサポートするのが、このカウンセリングの特徴です。

解決志向カウンセリングのメリット

SFCには、特に学校などの場面で役立つさまざまなメリットがあります。

  1. 短時間で効果を期待できる
    問題の原因を深掘りするのではなく、解決に向けてすぐに行動できるため、短いカウンセリング時間でも効果を感じやすいです。
  2. 前向きな気持ちになれる
    問題ばかりに目を向けるのではなく、自分の強みを活かした解決策を見つけることで、希望を持ちやすくなります。
  3. 自己肯定感が高まる「できないこと」ではなく「できること」に注目するため、自分の力を信じられるようになるというメリットがあります。
  4. 幅広い悩みに対応できる
    学校での成績の悩み、人間関係のトラブル、不安やストレスへの対処など、さまざまな場面で活用できます。


どんな人には向かないのか?

    一方で、SFCはすべての人に適しているわけではありません。特に、以下のようなケースでは、他のアプローチが必要になることもあります。

    • 深刻な精神的な問題を抱えている人
      例えば、重度のうつ病、トラウマ、統合失調症などの症状がある場合、問題の背景をじっくり話しながら進める別のカウンセリング方法が適していることがあります。
    • 自分の気持ちを言葉にするのが苦手な人
      SFCでは、自分の中にある答えを見つけることが大切ですが、考えを整理するのが難しい人にとっては負担になることもあります。
    • じっくりと感情を整理したい人
      SFCは解決に向けた行動を重視するため、過去の経験をじっくり振り返りたい人や、感情をしっかり整理したい人には物足りないと感じることもあります。
       

    まとめ

    これまでのカウンセリングでは、問題の原因を深く掘り下げることが重視されることが多かったため、私にとって解決志向カウンセリングの考え方は、まさに「目からうろこ」でした。特に、悩みの原因が自分でも分からない子どもは多く、そのような子どもたちにとって「過去よりも未来に目を向ける」というアプローチは大きな助けになるのではないかと感じました。

    しかし一方で、SFCを効果的に行うためには、カウンセラーの「傾聴」の力がとても重要だと考えます。ただ単に解決策を探るだけでは、クライアントが「自分のつらい気持ちをわかってもらえなかった」と感じてしまうかもしれません。SFCが成り立つためには、まずクライアントの気持ちをしっかり受け止め、「あなたの気持ちを理解していますよ」という安心感を与えることが前提になるのではないかと思っています。

    カウンセリングにはさまざまな手法があります。それぞれの特徴を理解しながら、相談者にとって最適な方法を選んでいくことが重要ですね。

    ※認知行動療法は、認知(考え)と行動の変容を促し、こころの問題を解決する心理療法です。

    千葉⼤学で2019年4⽉に⽴ち上げた「簡易(低強度)認知⾏動療法的アプローチによる相談⽀援を⾏うメンタルサポート医療⼈養成プログラム」では、対⼈援助職の⽅々を⽀援しています。

    2023年度より千葉⼤学発ベンチャー「株式会社メンサポ」が上記の教育⽀援事業を引き継ぎました。

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