認知行動療法を上手に使うための丁寧な話の聞き方3 ~アメリカ留学中 精神科医 A先生の心の成長を支えるアプローチ~ の複製

こんにちは。精神科医のAです。今回のコラムでは、傾聴シリーズの最後として、「相手の感情を探る」方法についてお話しします。今回は、より深い理解と共感を得るための方法を掘り下げていきます。

「再現VTR」のように、相手の感情を探る

大学院に入学した頃、ベテランの先生から「再現VTRを撮るように、相手の状況が細部にわたってわかるように聞き取ること」というアドバイスを受けました。このアドバイスは、非常に重要な傾聴の技術です。

どうやって「再現VTR」を作るのか

  1. 詳細な状況を尋ねる: 「いつ?どこで?どんな状況で?」といった質問を通じて、相手がその瞬間にどんな状況だったのかを詳しく聞きます。これは、相手が自分の体験を具体的に思い出し、表現する手助けをします。
  2. 感情に焦点を当てる: 「どんな気持ちだったの?」と感情に焦点を当てた質問をすることで、相手がそのときに感じていた感情を深く掘り下げます。
  3. オウム返しの活用: 相手が話した内容を繰り返して確認することで、相手が言いたかったことを正確に理解しているか確認できます。これにより、相手は自分の感情や考えを再確認しやすくなります。

このように詳しく聞くことによって、話している本人が自分の感情や状況に気づくことが増えます。このプロセスを通じて、相手が自分の感情を理解し、認められる経験を得ることができるのです。そして、私たちも相手のストーリーの中に深く入り込み、その感情を共感することができます。これが、本当の意味での共感につながります。

カール・ロジャースの三つの条件

最後に、傾聴の生みの親であるカール・ロジャースが提唱した「クライアント中心療法」における三つの条件について触れます。これらの条件が、良好なカウンセリング関係を築くための基本となります。私は、今回まで説明してきた、VTRの再現や、適切なオウム返しや事実と感情を見極めて話を聞くという技術をこの事項を実践するために用いています。

  1. 無条件の肯定的配慮: 相手を評価や条件なしに受け入れる態度です。相手がどのような状態でも、その価値を認めることが大切です。
  2. 誠実さ: 自分自身にも他者にも偽りなく、真実の自分を表すこと。内面の感情や思考と外面の行動が一致している状態です。
  3. 共感: 相手の感情や視点を理解し、共感的に接する能力です。相手の立場や感情を真摯に感じ取ろうとすることです。

この三つの条件は一見シンプルですが、これまで話してきたように、非常に難しく時間がかかるものです。しかし、これらを態度をもって、粘り強く関わっていくことで、より深い理解と共感を持つことができるのです。

【次回の予告】

次回からは、子どもに対する認知行動療法の内容について、お話ししていく予定です。

どうぞお楽しみに。

※認知行動療法は、認知(考え)と行動の変容を促し、こころの問題を解決する心理療法です。

千葉⼤学で2019年4⽉に⽴ち上げた「簡易(低強度)認知⾏動療法的アプローチによる相談⽀援を⾏うメンタルサポート医療⼈養成プログラム」では、対⼈援助職の⽅々を⽀援しています。

2023年度より千葉⼤学発ベンチャー「株式会社メンサポ」が上記の教育⽀援事業を引き継ぎました。

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