認知行動療法を上手に使うための丁寧な話の聞き方2 ~アメリカ留学中 精神科医 A先生の心の成長を支えるアプローチ~

こんにちは。精神科医のAです。今回は「傾聴のしかた」について、特に「オウム返し」の使い方と、相手の感情を引き出す技術についてお話しします。

オウム返しの落とし穴

「傾聴」を学ぶと、よく「オウム返し」が効果的だと言われます。例えば、相手が「この間〇〇なことがあって」と言ったら、「〇〇なことがあったんですね」と返すようなものです。相手の言葉を繰り返すことで、否定や批判をせずに受け入れることができます。これは時には有効です。

しかし、もしずっとこのような返答ばかりされたらどうでしょうか?相手は「まるで機械に話しているみたいだ」と感じてしまうかもしれません。オウム返しは、冷静に話を受け止めるために使うと効果的ですが、相手との間に距離ができてしまい、心が通わなくなる可能性があります。

事実、感情、考えを見分ける

では、オウム返し以外にはどのような方法があるでしょうか?ここで大切なのは、相手が話している内容が「事実」なのか「感情」なのか、「考え」なのかを見極めることです。

たとえば、前回お話しした中学生の女の子が「みんなから嫌われている気がする」と言った場合、これは「考え」を表現していますが、「感情」ではありません。聞き手はつい「この子はつらいのだろうな」と感情を解釈してしまいがちです。

共感することは重要ですが、それを自分の中で終わらせず、相手に自分の感情を言葉で表現してもらうことが必要です。相手が感情を自分の言葉で表現したとき、聞き手への心の開示がなされ始めたことがわかり、また、話している本人も自分への気づきが得られ始めます。そしてその感情に対して、「つらかったですね」と共感することで、初めて相手は「わかってもらえた」と感じます。もし相手が感情をうまく表現できない場合は、「その状況はすごく不安だったのでしょうか?」といった形で感情を引き出す質問をするのも効果的です。そのように質問すると、誘導や断定になってしまう可能性もあるので、あくまでも、質問の形で聞いていくのが良いでしょう。

相手の感情を引き出す

感情を引き出すことは難しい作業です。多くの人は、自分が傷つかないように感情を隠します。話好きな子供であっても、深い感情を話すのは難しく、時間がかかることが多いです。そのため、聞き手が焦らずに待つことが重要です。急いで解決しようとせず、ゆっくりと相手の心がほぐれるのを待つことが、傾聴の鍵となります。私も診療の際には、相手が感情を話すことがどれほど難しいかを意識しながら、焦らずに心が開かれるのを待つよう心がけています。

次回は、傾聴シリーズの第3回として「感情を探る」というテーマでさらに詳しくお話しします。

※認知行動療法は、認知(考え)と行動の変容を促し、こころの問題を解決する心理療法です。

千葉⼤学で2019年4⽉に⽴ち上げた「簡易(低強度)認知⾏動療法的アプローチによる相談⽀援を⾏うメンタルサポート医療⼈養成プログラム」では、対⼈援助職の⽅々を⽀援しています。

2023年度より千葉⼤学発ベンチャー「株式会社メンサポ」が上記の教育⽀援事業を引き継ぎました。

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