子どもの診療と認知行動療法          ~アメリカ留学中 精神科医 A先生の心の成長を支えるアプローチ~

こんにちは。精神科医のAです。日々の診療で子どもたちから多くのことを学んでいます。今日は「子どもの診療と認知行動療法」についてお話しします。認知行動療法(CBT)と聞くと難しそうですが、実はそんなことはありません。少しの知識があれば、子どもたちと一緒に考え、前に進むことができるのです。
ヒントになる認知や行動をこれから10回のコラムでお伝えしていきます。

例:友達に嫌われていると感じる子ども

例えば、ある日「友達に嫌われている」と感じている中学生の女の子が診察に来ました。もし自分の子どもや身近な子どもに同じことを言われたら、どうしますか?「気にしすぎだよ」「大丈夫だよ」と励ますかもしれません。それも一つの方法ですが、実はもっと効果的な方法があります。

子どもは大人以上に考え込んでいる

子どもは大人が思う以上に色々なことを考えています。言葉にするのが苦手だったり、「変に思われるんじゃないか」「怒られるかも」といった不安で口に出せなかったりします。そこで、大人が子どもの考えや感情を整理し、客観視する手助けができると、子どもは前に進みやすくなります。

先生の「正しい言葉」が逆効果に

先ほどの中学生の女の子は、自分を傷つける行為をしていました。不安な気持ちを担任の先生に相談したところ、「何があっても自分を傷つけてはいけない。お母さんが悲しむよ」と言われたそうです。先生は正しいことを言ったつもりですが、その子はそれ以上何も言えなくなり、自分を責めるようになってしまいました。

認知行動療法の役割

こうした状況を改善するために、認知行動療法(CBT)が役立ちます。CBTは、状況、考え、感情、行動、身体症状を分けて考え、客観視する方法です。子どもが感じているもやもやを一つ一つ言葉にし、一緒に解きほぐしていきます。

認知行動療法の具体的なポイント

  1. 状況の把握:どんな時に、どこで、誰といる時にその感情が湧くのかを明確にします。
  2. 考えの特定:その状況で浮かぶ具体的な考えを見つけます。例えば、「友達に嫌われている」といった自動思考です。
  3. 感情の識別:その考えがどんな感情を引き起こしているのかを特定します。例えば、「悲しい」「不安」などです。
  4. 行動の分析:その感情によってどんな行動を取るようになっているのかを観察します。例えば、自傷行為などです。
  5. 身体反応の理解:その感情がどんな身体的な反応を引き起こしているのかを理解します。例えば、胃の痛みなどです。

子どもとの信頼関係を築くために

子どもとCBTを効果的に行うためには、信頼関係が不可欠です。次のようなアプローチが有効です。

  • 共感と傾聴:子どもの話をしっかり聴き、感情に寄り添います。
  • 非評価的な態度:子どもの考えや感情を評価せずに受け入れます。
  • 開かれた質問:子どもが自由に気持ちを話せるように質問します。

具体的なCBTの進め方

  1. 認知の再構成:ネガティブな考えを現実的でバランスの取れた考えに変える手助けをします。
  2. 行動実験:新しい考え方を試す機会を作ります。
  3. リラクゼーション技法:ストレスや不安を感じた時に使えるリラクゼーション技法を教えます。

次回は、この「認知行動療法」を上手に使うための具体的なポイントについて、さらに詳しくお話しします。認知行動療法を通じて、子どもたちがより良い方向に進めるよう、一緒に考えていきましょう。お楽しみに。

※認知行動療法は、認知(考え)と行動の変容を促し、こころの問題を解決する心理療法です。

千葉⼤学で2019年4⽉に⽴ち上げた「簡易(低強度)認知⾏動療法的アプローチによる相談⽀援を⾏うメンタルサポート医療⼈養成プログラム」では、対⼈援助職の⽅々を⽀援しています。

2023年度より千葉⼤学発ベンチャー「株式会社メンサポ」が上記の教育⽀援事業を引き継ぎました。

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